無形商材のお見積りを出す時、みなさんはどのような思想で「そろばん」を弾いているでしょうか。 一般的には、「このサービスを提供するために必要な項目と、その費用はこれくらいですが、発注しますか?」という、単なる価格の提示ツールだと思われがちです。 もちろんそれも間違いではありません。しかし、もう一段視座を上げて見積書の意味を考えてみると、あれは「お客様のゴールに必要な手段の内訳と、その役割を説明する書面」であり、「受理された項目の役割を100%果たす、というお約束の書面」なのだと私は思っています。 期待値と現実の「グレーゾーン」をはっきりさせる 実は最近、私自身が他社から受けているサービスで納得がいかないことがあり、「見積書のこの項目について、改めて役割を説明してください」と聞いてみる機会がありました。 その際、実際のクオリティと、見積書に「やります」と自信満々で計上されている金額のギャップを目の当たりにし、「これはいかがなものか……」と強く考えさせられる体験をしたのです。 もちろん、発注側である私自身の「見積書への目通しが甘かった」という反省点もあります。しかし同時に、「自分自身も、自社のお客様に同じような思いをさせてしまっていないだろうか?」という強い気づきを得ました。だからこそ、その戒めと決意を込めてこのコラムを書いています。 「できないこと」をはっきり伝える誠実さ お見積書を出すにあたって最も大切なのは、「費用と作業の価格が適正値であることを、ロジカルに説明できるか」に尽きます。 私自身、発注側として「今回のプロジェクトは失敗したな」と感じる原因のほとんどは、「期待値」を曖昧にしたままスタートしてしまったことにあります。 「この金額なら、きっとこれくらいはやってくれるよね?」という発注側の期待と、「この金額だから、ここまでしかやらない」という受注側の線引き。ここがズレたまま進むプロジェクトは、誰も幸せになれず、何より仕事として全く面白くありません。 見積もりを出す側(受注側)は、強い説明責任を負っています。 だからこそ、「できること」を語るのと同じくらい、「できないこと」をはっきり伝えることが極めて重要です。 一方で、発注側も専門的な作業工程までは分かりません。だからこそ、「ゴール(絶対に達成したいこと)」を明確にし、それを受注側に深く理解してもらうことに注力する。 この双歩み寄りと共通認識こそが、お互いに強い納得感を生み、納品・請求までを最高に気持ちよく完結させる秘訣です。 社内の対立をなくし、お客様の満足度を最大化する この「見積もりの期待値」のズレは、社内でもよく起こります。 営業部門と、実際に手を動かす制作・製造部門の間で、お客様の課題に対する理解度に差があると、社内で不毛な対立構造が生まれてしまいます。 個人の営業成績といった部分最適な利益を追うのではなく、全体で足並みを揃え、「お客様のゴールを達成するために本当に必要なものは何か」を全員で意思疎通する。これだけで、お金に起因する社内摩擦はなくなり、結果としてお客様に提供できる価値(満足度)は最大化します。 そのための第一歩として、まずは提供しているメニューの定義と、役割ごとの時給を見直し、「お客様に1円単位まで自信を持って説明できるお見積書」を出すことから始めてみてはいかがでしょうか。 最後に:これからの時代に私たちができること 終身雇用という当たり前が崩れ去った今、私は「一緒に働くメンバーが、いつか会社を卒業して独立したときにも、自分の腕一本で食っていけるように育てること」も、業界を盛り上げる大切な社会貢献だと考えています。 そのためにも、まずは経営者である私たち自身が、曖昧さに逃げず、誠実でガラス張りなお見積りと向き合う背中を見せていきたいものです。